|
あまりにも喫茶店を愛していたから、ノートパソコンを買うことにした――っていうと大袈裟に思えるかも知れないけど、これ、本当のコトなのだ。 ![]() 新宿文化ホール近くにある喫茶店「アルル」 そのころ(ってだいたい5年くらい前だ)住んでいたのは高田馬場の2DKのマンションだった。相方と2人で暮らしていた。なにせ働く2人の衣服やら本やら化粧品やらCDやらパソコンやらシンセイサイザーやらが詰め込まれたワケだ。んなもん、快適なワケがない。油断すると新聞とホコリと洗濯物で足の踏み場もなくなってしまう。 とにかく問題は休日だ。唯一のオアシスだった机の上も、結局会社から持って帰った書類などでごったがえし、とてもその前に座る気なんて起こらない。 で、自転車でぶらっと出かけ、喫茶店でくつろぐことになる。もともと出張先や旅行先でさえ、喫茶店でくつろぐのが一番好きだったりする。学生時代に訪れた松江の喫茶店では、窓から川を見下ろしながら友だちにハガキを書いたし、今でも神宮や青山界隈のカフェを自転車ではしごするくらいの喫茶店・カフェ好きなのだ。 しかし1つ残念なことがあった。「喫茶店ではパソコンが使えない」。 無類のキー入力フェチで、暇さえあれば文章を書いている(っていうか打っている)僕にとって、パソコンが使えないのは、もう決定的に耐えられないことになっていた。ある日いてもたってもいられなくなった僕は、急に家を出て山手線に乗り、新宿の中古パソコンショップに出かけ、衝動的にPowerBookを買ってしまった。メールもしたくなって、中古のPowerBook2400も購入した。それもこれも、喫茶店でキー入力&メールチェックしたいからである。 そこまで好きな喫茶店&カフェだから、当然条件もうるさい。 まず机。新聞が広げられるスペースがいい。あわよくば、新聞の脇にコーヒーを置く余裕もあれば申し分ない。この条件を最も満たすのは? 実はファミレスなのだ。 悔しいかな、空間の余裕から言うと、ファミレスほど快適な場所はない。椅子の座り心地、テーブルの広さ。しゃれたカフェに行こうものなら、こじゃれた丸卓にほとんどスツールほどの小さな椅子があてがわれる。一見洒落てるが、極めて座り心地が悪い。新聞を読もうにも、コーヒーカップとミルクを置いたら、あとは本を置くのが精一杯といった体たらくだ。それに比べてファミレスの広々とした空間はどうだ。空いている時間に4人かけのテーブルを独占できれば、ノートパソコンを置いて新聞を広げてメモ帳を傍らに、まだコーヒーカップとケーキを置く余裕がある。 しかし!だ。いかんせん食事がまずくて高い。新聞や雑誌も置かれていない。なんとも無駄がない。これが耐え難い。 わざわざ喫茶店やらカフェまで赴くからには、ほかにはない何か、言うなればなくてもいいんだが、それがあるからこそその場所が生きている個性が欲しい。愛媛県庁脇にある喫茶店。「讃岐うどんとまぜご飯とコーヒー」550円のセットがあり、ブルータスとスタジオボイスと新聞大手3紙が置いてある――そんな余裕がほしい。 ![]() 決してオシャレ過ぎない。だからこそ落ち着く空間 で、「アルル」なのだ。新宿文化ホール手前にある喫茶店である。僕が知る限り、日本で最も優れた喫茶店の1つだ。柔らかくて座り心地の良い椅子。新聞を広げる十分余裕のある机。店内には新聞のほかに漫画の単行本、女性誌からパソコン雑誌まである。ハイチカレーからナポリタンまである豊富な軽食類。ウィンナーコーヒー430円はリーズナブルで、ナッツが付く名古屋風。飲みたい時はビールも飲める(これは重要だ)。メニューも安い。小腹が減ったときは、フランスパンにハムとチーズを乗せて焼いたクロークムッシュ200円をつまんでビールやコーヒーを飲む。 ![]() ウィンナーコーヒー(430円)にはナッツが付く。 クロークムッシュ200円はスナックに最適 個人的には、茨城県古河市のOffice用家具を再利用したFREE CAFE、福岡県門司市にある海沿いの倉庫を改装したカフェ(名前は忘れた)がこれに続く。新宿から渋谷、池袋に蒲田と東京中を自転車で走り回り、北海道美瑛から沖縄は那覇、福岡県門司港から高知県香北なんて山奥まで出張しまくって喫茶店を漁った。東京・神宮界隈、大阪・南船場界隈のカフェももちろん面白い。が、個人的にはこの3つ。中でも、全体のバランスから言えば「アルル」だ。 自転車で前を通る度に、常にコーヒーを飲みながら漫画を読みたいという衝動に駆られる。 ![]() 漫画と雑誌、新聞が豊富なのも、通いたくなる1つの条件だ |